ActiON

現在のFTTHでは,PON(Passive Optical Network)と呼ばれるパッシブ型のアクセスネットワークが用いられている.PONは,局側装置であるOLT(Optical Line Terminal),光スプリッタ,加入者側装置であるONU(Optical Network Unit)から構成される.PONの利点として,光スプリッタというパッシブデバイスを用いるため,低コスト,電源不要であることが挙げられる.一方で,光スプリッタで光パワーが分岐するため,1つのOLTに対して収容可能な加入者数と,加入者までの最大距離はトレードオフの関係になるという点と,全ての光信号が全ONUに届くため,回線秘匿性に関しても原理的限界があるという問題点がある.
そこで山中研究室では,光スイッチを用いたアクティブ型の新たな光アクセスネットワークActiON(Active Optical Network)を提案している.ActiONでは,スプリッタの代わりにスイッチング技術を用いることで,多分岐化と伝送距離の伸長を可能にし,セキュリティの向上を図る.現在標準化が進んでいる10GE-PONと互換性を保ちつつ,収容加入者128,最大伝送距離40kmを目指す.
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光スイッチとして,10nsec以下の切替速度を達成するPLZT(Plomb Lanthanum Zirconate Titanate)光スイッチの利用を想定し,データ送信方式として従来から提案している光スロット交換OSS(Optical Slot Switching)技術を利用する.OSSでは,スロットと呼ばれる固定長の時間単位でスイッチングを行い,複数のスロットから構成される周期的なサイクルという単位で光スイッチを制御する.予約したスロット時間では全帯域を利用できるため,様々なデータを受け入れ,トランスペアレントなデータ送信が可能となる.
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研究紹介

ActiONでは,光スイッチというアクティブデバイスを用いることにより電源が必要となる点や,各ONU へのブロードキャスト送信が使えなくなるため,ONUの発見(Discovery)やデータ送信をどのように行うか課題がある.
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Discovery
ActiONでは,Broadcastを用いずにDiscoveryを実現する手法として,周期的なコントロールスロットの設定とONU からのRegister Request連続送信によるコントロールスロットの把握方式を提案する.光スイッチを定期的にある放路に切り替える時間としてコントロールスロットを設定し,このコントロールスロットを用いて,Discovery処理を行なう.
図にActiONにおけるDiscoveryのシーケンスを示す.OLTは,初期状態において,ONUとの距離,コントロールスロットの位置が分からないため,ONUからのRegister Requestの連続送信によりコントロールスロットを通過したタイムスタンプを利用して,ONUとの距離,コントロールスロットの位置を把握することが可能となる.

TCPフレンドリーなActiON
ActiONでは,インターネットで利用される標準プロトコルであるTCPスループットへの影響を考慮し,各ユーザの様々なトラヒック要求へのフレキシブルな対応を図る.TCPスループットの帯域利用効率とスイッチ制御におけるCycle(s)の関係を図に示す.TCPスループットの帯域利用効率を90%以上保証するためには,Cycleを0.14s以下にする必要がある.
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研究業績

  • 徳橋和将, 菊田 洸, 石井大介, 荒川豊, 岡本 聡, 山中直明, “アクティブ光スイッチを用いた光アクセス網の一検討,” 電子情報通信学会技術研究報告, Vol. 2008-22, pp. 49-53, August 2008.
  • 芦沢國正, 徳橋和将, 菊田洸, 石井大介, 荒川豊, 岡本聡, 山中直明, “アクティブ光アクセスネットワークにおけるTCPスループットを考慮したパラメータ設計および動的スロット割当,” 電子情報通信学会技術研究報告, Vol. 108, No. 476, pp. pp. 7-12, March 2009.
  • 芦沢國正, 徳橋和将, 菊田洸, 石井大介, 荒川豊, 岡本聡, 山中直明, “アクティブ光アクセスネットワーク(ActiON)のスロット割当方式における研究課題,” PN研究会学生ワークショップ, March 2009