コンテンツ配信網

近年,Webサービスの急速な普及およびアクセス網の高速化に伴い,ネットワークを伝送されるコンテンツとして,リッチコンテンツと呼ばれる映画や音楽などの大容量ファイルが増加している.特に,音楽配信ではApple,動画配信ではGyaoなどのサービスが普及しており,比較的大きなデータをダウンロードする機会が増加している.また,Peer to Peer(P2P)アプリケーションの普及に伴い,さらに大容量なフィアルデータなどもインターネットを介して交換され始めている.さらに,映像コンテンツの配信もさまざまなプロバイダー等で開始されている.このような映像コンテンツ配信サービスは,ほとんどの場合がストリーミングによるものである.従来,前述したようなコンテンツを閲覧する場合,すべてのデータを受信するまで待つ必要があり,電話回線など転送速度の低い回線では閲覧することができない.そのため,低速な回線でもマルチメディアデータのリアルタイム再生を可能とするストリーミングが用いられている.しかし,ストリーミングには,ネットワーク接続がなければ映像を閲覧することができない,ネットワークに大きな負荷を与える,ネットワーク回線のデータ転送スピードやコンピュータのパワーに画質が影響されるなどの欠点がある.今後普及すると予想されるHDクラスの映像コンテンツはデータ容量が莫大なため,ネットワークに与える多大な負荷や,画質の劣化を考えるとストリーミングによる配信は難しい.そこで、本研究では、インターネットを介して、このような巨大ファイルデータをターゲットとした新しいコンテンツ配信方式を提案する。

先読みProxyを用いた事前ダウンロード

  1. クライアントはプリフェッチプロキシサーバを介してWebサーバにアクセス
  2. クライアントのアクセスを受けて,プリフェッチプロキシサーバはWebサーバのHTML文書を解析しすべてのミラーサーバへのリンクを抽出
  3. 同時にすべてのミラーサーバへの空き帯域状況,回線速度などを調べ応答時間が最短のダウンロード先を選択
  4. プリフェッチプロキシサーバは,選択された応答時間が最短のダウンロード先にコンテンツを要求.コンテンツをプリフェッチプロキシサーバがプリフェッチしキャッシュに保存
  5. クライアントがリンクをクリックすると,Webサーバからではなくプリフェッチプロキシサーバからダウンロード

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P2Pネットワークによるコンテンツ配信

  1. クライアントはプリフェッチプロキシサーバを介してコンテンツサーバにアクセス
  2. コンテンツサーバはリクエストされたコンテンツと一致するクライアントのリストをデータベースから検索.検索されたすべてのミラーにpingを送信し,Round Trip Time (RTT) を計測
  3. XMLを動的に書き出し,RTTが最短のクライアントをダウンロード先としてクライアントに表示
  4. クライアントは表示されたダウンロード先にコンテンツを要求
  5. P2Pネットワークでコンテンツをダウンロードし,プリフェッチプロキシサーバのキャッシュに保存
  6. クライアントはプリフェッチプロキシサーバのキャッシュからコンテンツをダウンロード

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プロトコル変換
クライアントからサーバへのリクエストは従来同様にHTTPで行う.しかし,サーバからクライアントへコンテンツ配信を行う場合は,HTTPを用いるのではなく,FTPやP2Pプロトコル,さらに下位レイヤにおいてOptical Burst Switching(OBS)を用いる手法などが考えられる.このことにより,映画などのリッチコンテンツのダウンロード時間を大幅に短縮できる.
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研究業績

  • 辻智博,本間潤一郎,清水翔,荒川豊,山中直明, “バースト転送を用いたミラーサーバ自動選択型プリフェッチプロトコルプロキシの提案,” 電子情報通信学会技術研究報告, PN2005-119, pp115-119, 2006年3月

負荷によるマルチキャスト/ユニキャスト配信切替
CDNでは,各々がオリジンサーバのコンテンツの全てもしくは一部を持ったサロゲートサーバ(キャッシュサーバ)を地理的に複数に分散配置したネットワークを構成する.ユーザ要求を適切なサロゲートサーバに分散させることでサーバの負荷の低減を図っているが,サーバの処理能力には限界があるため,大多数のユーザ要求に対応しきれない可能性がある.
そこで本研究では,コンテンツサーバにてユニキャスト配信,ユニキャスト遅延配信,マルチキャスト配信方式の3方式をユーザ要求の増加に伴い効率的に切り替えるコンテンツ配信方式を提案する.ユニキャスト遅延配信では,短期間で大多数ユーザがコンテンツ要求をしてきた場合,配信タイミングを遅延させる.ユーザ要求の増加に対して遅延により対処しきれなくなった場合,マルチキャスト配信に切り替え,マルチキャスト受付時間を設定する事でユーザの同時接続数を大幅に削減する.
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下位レイヤ協調型P2Pネットワーク
P2Pアプリケーションの普及および流通トラヒックの急激な増加化に伴い,P2Pアプリケーションの利点である構築の柔軟性によりもたらされる膨大なトラヒックが下位ネットワークに与える影響が深刻な問題となった.P2Pアプリケーションによる巨大なトラヒックの影響を軽減する方法として,P2Pトラヒックをモニタリングし,規制する方向に動いているISP(Internet Service Provider)も存在する.今後,P2Pアプリケーションを効果的に利用していくためには,帯域制御等のリソースマネジメントを行い,ネットワークに対する負荷を軽減することのできるP2Pシステムの構築が必要不可欠である.
そこで本研究では,下位ネットワークと協調して帯域制御機能を実現するため,GMPLSによるRSVP-TEを利用した動的パス設定を行う,次世代P2Pアプリケーションネットワークアーキテクチャについて提案する.本提案ではでデータ伝送時にRSVP-TEを用いて帯域指定のパス設定を行うことにより,最低帯域保証によるQoS保証,および最大帯域制限によるP2Pアプリケーションのネットワークに対する負荷の緩和を実現する.
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