トラヒックエンジニアリング

ブロードバンド通信サービスの飛躍的な伸びにより,ネットワークにおけるトラヒックの増加や変動を正確に予測することが困難になってきており,ネットワーク資源を有効的に利用するトラヒックエンジニアリングの研究開発が進められている.トラヒックエンジニアリング(TE:Traffic Engineering)とは,ネットワーク資源の使用状況とトラヒックパフォーマンスを同時に最適化し,効率良く,信頼性のあるネットワークオペレーションを促進するためにデータトラヒックのためにパスを選択するプロセスのことである.トラヒックエンジニアリングでは,最適化の指針として,パケットロスおよび通信遅延の最小化,スループットの最大化などの実施を行うことを目的としたトラヒック指向型とネットワーク資源の利用率を最適化することを目的とする資源指向型がある.2つに共通する性能目標は,ネットワーク内の輻輳を最小限に抑えることである.輻輳を最低限に抑えることができれば,パケットロスおよび通信遅延は減少し,スループットの向上を達成することができる.その結果,ユーザレベルでの通信品質は飛躍的に向上することになる.トラヒックエンジニアリングを実現するためには,発生するトラヒックに対して,ネットワークの状態を考慮した資源の割り当てを実施する必要がある.トラヒックエンジニアリングを実施する際には,資源の監視,トラヒック特性の分析,トラヒックのモデル化及びトラヒックの制御のそれぞれを行う.以上の4項目を正確に行うことで高度なトラヒックエンジニアリングを実現可能となる.

GMPLSにおけるトラヒックエンジニアリング
GMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)は従来のルーチングとは異なり,ラベルを使用してトラヒックを転送する.GMPLSドメインと他のドメインと隣接しているルータをエッジルータといい,エッジルータ間で通信を行う.GMPLSの特徴としてネットワーク上の資源情報(使用可能波長数など)の収集とソースルーチングによる明示的な経路決定という点がある.トポロジ情報収集は,OSPFを拡張したOSPF-TEを使用して各ルータの資源状況を伝搬する.収集した資源情報を使用して,送信エッジルータにより宛先エッジルータまでの経路計算を行い,経路を決定する.従来のIPパケットによる通信では次のホップが予測困難でTEの実現は困難であったが,GMPLSでは経路が送信エッジルータで決められるため明示的経路となり,ネットワーク上の資源の変化に対応して経路を決定することが可能となりGMPLSを使用したトラヒックエンジニアリングが注目されている.

研究紹介

高速な予約可能資源情報の伝搬方法
GMPLSではOSPF-TEにより資源情報が伝搬される.資源情報の中でも予約可能資源情報に注目をしてみる.予約可能資源情報とは,予約可能波長を意味している.予約可能資源情報は呼の発生によって頻繁に変化するものであり,TEにおいて経路決定に使用する重要な要素である.予約可能資源情報が正確にそして高速にエッジルータに伝搬されることにより精度の高いTEを行うことが可能となる.従来のOSPF-TEでは頻繁な変化に対応するために多くの更新パケットを送信することが必要となり,そしてルータにおいて処理することが困難となり正確な情報を伝搬することが不可能となる.そこで,提案方式ではRSVP-TEの経路確保または開放時にOSPFプロトコルを使用せずに経路上の変更した予約可能資源情報を一括して送信することにより,より高速に予約可能資源の変更をエッジルータに知らせ,更新のためのパケットを少なくすることでルータの負荷も低減させることが可能となる.